チームの”違い”を武器にできていますか?
「部下の価値観がバラバラでまとめにくい」
「Z世代の若手とベテラン社員の価値観の違いに戸惑う」
「ダイバーシティが大事とは言われるけど、具体的に何をすればいいのか分からない」
新任マネージャーの多くが直面するこうした悩みは、チーム内の”違い”をどう扱うかという課題に集約されます。
実は、多様性は放置すれば衝突や混乱の原因になりますが、正しくマネジメントできればチームの最大の強みに変わります。
私自身、異なる年齢層・職種・価値観を持つメンバーと働く中で、「リーダーの姿勢ひとつでチームの生産性と雰囲気が劇的に変わる」と何度も実感してきました。
この記事では、多様性を活かせるリーダーと活かせないリーダーの違いを明確にし、明日から実践できる具体的なマネジメント手法をご紹介します。
多様性マネジメントとは?
ダイバーシティもインクルージョンも両方が必要
ダイバーシティ(多様性)とは、年齢、性別、国籍、経験、価値観、働き方などが異なる人材が集まっている状態を指します。
しかし、多様な人材がただ集まっているだけでは不十分です。
重要なのはインクルージョン(包摂)、つまり互いの違いを尊重し、全員が力を発揮できる環境を整えることです。
| ダイバーシティ | インクルージョン |
|---|---|
| 多様な人材を集める | 違いを尊重し活かす仕組み |
| 「状態」 | 「行動・文化」 |
リーダーに求められるのは、多様性をチームの武器に変える「仕組みづくり」と「包摂的な姿勢」です。
なぜ今、多様性マネジメントが重要なのか
現代の職場を取り巻く環境変化:
- 働き方の多様化:リモート、時短、副業など選択肢が増加
- グローバル化:異なる文化背景を持つメンバーとの協働
- 世代間の価値観の違い:Z世代、ミレニアル世代、X世代、ベビーブーマー世代の混在
- イノベーションの必要性:同質的な組織では新しい発想が生まれにくい
従来の「みんな同じように働く」マネジメントでは、もはや成果を出せない時代になっています。
多様性がもたらす3つのメリットと2つの課題
メリット1:イノベーションと創造性の向上
異なるバックグラウンドを持つメンバーが集まることで、これまでにない視点やアイデアが生まれます。
マッキンゼーの調査によると、多様性の高い企業は業界平均より35%高い財務パフォーマンスを示すというデータもあります。
メリット2:変化への適応力が高まる
多様な視点を持つチームは、環境変化に柔軟に対応できます。ひとつのやり方が通じなくても、別の角度から突破口を見つけられるのです。
メリット3:優秀な人材の獲得・定着
多様性を尊重する組織は、様々な背景を持つ優秀な人材から「ここで働きたい」と選ばれます。
課題1:意見の衝突や摩擦が増える
価値観やアプローチが異なるため、議論が噛み合わなかったり、衝突が生じやすくなります。ただし、これは必ずしも悪いことではありません。建設的な対立をマネジメントできるかがリーダーの腕の見せ所です。
課題2:コミュニケーションコストの増加
「言わなくても分かる」が通じないため、丁寧なコミュニケーションが必要になります。これを手間と感じるか、成長機会と捉えるかで結果が変わります。
【NG行動】多様性を潰すリーダーの3つの特徴
NG1:異なる意見をすぐ否定する
NGな例
- 「それは現実的じゃない」
- 「前例がないから無理」
- 「うちのやり方はこうだから」
多様な意見が出ても即座に否定してしまえば、メンバーは意見を出さなくなります。心理的安全性が失われ、多様性の価値がゼロになります。
NG2:自分と似た人ばかりを評価・優遇する
NGな例
- 自分と価値観が近い人だけに重要な仕事を任せる
- 同世代・同じ働き方をする人ばかり評価する
- 「気が合う人」と「仕事ができる人」を混同する
これは「親和性バイアス」と呼ばれる無意識の偏見です。公平さを欠くと、他のメンバーは疎外感を感じ、モチベーションが下がります。
NG3:「昔はこうだった」と自分の経験を押しつける
NGな例
- 「俺の若い頃はもっと残業してた」
- 「昔はこのやり方で成功したから」
- 「最近の若い人は…」
経験豊富なリーダーほどやりがちな落とし穴です。自分の成功体験は参考にはなりますが、唯一の正解ではありません。
【実践編】多様性を強みに変える5つのマネジメント手法
手法1:会議で全員の意見を引き出す仕組みを作る
具体的な方法
- ラウンドロビン方式:順番に一人ずつ意見を述べる時間を設ける
- 事前アンケート:会議前にオンラインで意見を集める
- 沈黙の時間:「2分間、各自で考えをメモしてから共有」
発言の多い人だけで議論が進むと、内向的なメンバーや慎重派の意見が埋もれてしまいます。
手法2:役割分担を「得意」と「個性」に合わせる
例
- 数字に強い人:データ分析、予算管理
- 文章力のある人:レポート作成、プレゼン資料
- 発想力に優れた人:企画立案、ブレスト進行
- 調整力のある人:他部署との連携、スケジュール管理
一律に仕事を割り振るのではなく、強みを活かせる役割を意識的に設計することで、チーム全体の生産性が上がります。
手法3:価値観の違いを理解するための対話を持つ
1on1で聞くべき質問例
- 「どんな働き方が一番力を発揮できると思う?」
- 「このプロジェクトで何を学びたい?」
- 「なぜそのアプローチを選んだの?」
価値観を理解しないまま指示だけ出しても、本当の力は引き出せません。
手法4:評価軸を多様化する
成果だけでなく、プロセスや工夫も評価する:
- 「あなたの〇〇という視点が、チームに新しい気づきをもたらした」
- 「丁寧な準備のおかげで、トラブルを未然に防げた」
多様な強みを認められる評価制度が、インクルージョン文化を育てます。
手法5:小さな成功事例を共有して文化を根づかせる
例
- 「先週の会議で、Aさんの意見とBさんの意見を組み合わせたら、予想以上の成果が出た」
- 「異なる視点を取り入れたことで、顧客満足度が上がった」
成功体験を言語化し共有することで、「違いを歓迎する文化」がチームに定着します。
ケーススタディ:多様性を活かしたチームの実例
ケース:世代間ギャップを強みに変えたプロジェクト
あるチームでは、50代のベテランと20代の若手が価値観の違いで衝突していました。
リーダーが取った行動
- 双方の意見を個別に丁寧にヒアリング
- 「経験値」と「新しい視点」の両方が必要だと明言
- ベテランには戦略設計、若手にはSNS活用を任せる役割分担
結果
互いの強みを認め合い、過去最高の成果を達成。
チームの雰囲気も改善しました。
まとめ:多様性を活かすのは「仕組み」と「姿勢」
多様性は、放置すれば衝突の原因になりますが、意識的にマネジメントすれば最大の武器になります。
多様性を活かせるリーダーの特徴
- 違いを尊重するインクルージョンの姿勢を持つ
- 意見を否定せず、全員が参加できる仕組みをつくる
- 個々の得意を活かす役割分担をする
- 小さな成功体験を積み重ねて文化を育てる
多様性を活かせないリーダーの特徴
- 異なる意見をすぐ否定する
- 自分と似た人ばかり評価する
- 自分の経験を唯一の正解として押しつける
両者の違いは、「違いを力に変える姿勢と仕組みを持っているかどうか」です。
【今日から始める】多様性マネジメント アクションプラン
今日からできる具体的な行動:
✅ 次の会議で全員が一言ずつ話せる時間をつくる
→ 「一人30秒でいいので、今の率直な意見を聞かせてください」
✅ メンバーの得意分野を把握し、適材適所で仕事を割り振る
→ 1on1で「どんな仕事が一番やりがいを感じる?」と聞く
✅ 違いを前向きにとらえ、小さな成功事例をチームで共有する
→ 「〇〇さんと△△さんの異なる視点が合わさって良い結果が出た」と具体的に伝える
多様性マネジメントは、特別なスキルではありません。小さな習慣の積み重ねが、チームを強くします。
👉 まずは次の会議で「全員に意見を聞く」ことから始めましょう。それが、多様性を力に変える第一歩になります。


