話し方ひとつでチームの士気が変わる
新任マネージャーになって間もない頃、多くの方が直面するのが「部下とのコミュニケーション」の壁です。内容は正しいのに、なぜか部下のモチベーションが上がらない。そんな経験はありませんか?
実は、問題は「何を話すか」ではなく「どう話すか」にあるかもしれません。心理学の研究では、人は言葉の内容よりも、声のトーンや話し方から相手の印象を判断することが分かっています。
本記事では、新任マネージャーが陥りがちなNG話し方パターンと、今日から実践できる具体的な改善策をご紹介します。
なぜリーダーの「話し方」が重要なのか
第一印象は7秒で決まる
メラビアンの法則によると、コミュニケーションにおける印象形成では、言語情報(話の内容)はわずか7%。残りの93%は非言語情報(声のトーン、表情、話すスピードなど)で決まります。
つまり、どれだけ論理的に説明しても、早口だったり、ぶっきらぼうな口調だったりすると「この人は信頼できない」と判断されてしまうのです。
無意識の癖が信頼残高を削っている
「えー」「まあ」「とりあえず」といった口癖。終始単調なトーン。こうした小さな要素が積み重なると、部下は「この上司、頼りないかも」と感じます。
話し方は、毎日の積み重ねで信頼残高を増やす資産でもあり、知らないうちに削ってしまうリスクでもあるのです。
【要注意】新任マネージャーが陥るNG話し方5選
NG1. 曖昧な表現で指示を出す
NGな例:
- 「多分、今週中にいい感じで仕上げておいて」
- 「そのうちやっといて」
- 「適当にお願い」
なぜダメなのか: 部下は「いつまでに」「どのレベルで」仕上げるべきか判断できません。結果として、期待と異なる成果物が出てきたり、締切を逃したりするリスクが高まります。
改善のポイント: 期限と完成イメージを明確に伝えましょう。「金曜17時までに、A4・1枚で要点をまとめたものを提出してください」のように具体的に。
NG2. 「いや」「でも」から会話を始める
NGな例:
- 「いや、それは違うよ」
- 「でも、普通はこうだよね」
- 「なんでそんなこともわからないの?」
なぜダメなのか: 否定から入ると、部下は「自分の意見は受け入れられない」と感じ、次から発言しなくなります。心理的安全性が損なわれ、チームの創造性も低下します。
改善のポイント: まず受け止める姿勢を見せましょう。「なるほど、そういう考え方もあるね。ただ、こういう視点もあるけどどう思う?」と、対話形式に変えるだけで印象が変わります。
NG3. 早口・小声で聞き取りにくい
NGな例:
- 緊張して早口になる
- 自信なさげに小声で指示を出す
- 専門用語を連発してスピードを上げる
なぜダメなのか: 聞き取れないと、部下は「たぶんこういう意味だろう」と推測で動くしかありません。その結果、ミスや誤解が増え、手戻りが発生します。
改善のポイント: 意識的にゆっくり話し、重要な部分で間を取りましょう。相手の理解度を確認しながら進めることも大切です。
NG4. 場を和ませようと軽口や冗談を多用する
NGな例:
- 「君、またミスしたの?もう癖だね(笑)」
- 「〇〇さんって本当に要領悪いよね~」
- プライベートに踏み込んだからかい
なぜダメなのか: 立場の差がある関係では、冗談が「馬鹿にされた」「パワハラ」と受け取られるリスクがあります。本人は親しみを込めたつもりでも、相手は傷ついているかもしれません。
改善のポイント: 親近感を出したいなら、冗談ではなく「相手の努力を認める言葉」を使いましょう。「このプロジェクト、大変だったよね。お疲れさま」など。
NG5. 一方的に話して部下を置き去りにする
NGな例:
- 10分以上一人で話し続ける
- 質問の時間を設けない
- 部下が話そうとすると遮ってしまう
なぜダメなのか: 部下は「自分の意見は求められていない」と感じ、指示待ち人間になってしまいます。主体性が失われ、チームの成長が止まります。
改善のポイント: 2〜3分話したら「ここまでで質問ある?」「どう思う?」と問いかけましょう。コミュニケーションは双方向であることを意識してください。
NG話し方がもたらす3つの悪影響
1. 部下のモチベーション低下
曖昧な指示や否定的な言葉は「頑張っても評価されない」という心理を生み、やる気を奪います。
2. 上司・顧客からの評価ダウン
信頼されない話し方は、社内外問わず「この人に任せて大丈夫?」という疑念を抱かせます。
3. チーム全体の雰囲気悪化
リーダーの話し方が否定的だと、メンバーは委縮し、意見を出さなくなります。結果、イノベーションが生まれない停滞したチームに。
【実践編】話し方を改善する4つのステップ
ステップ1. 自分の話し方を録音して客観視する
会議や1on1を録音(相手の許可を得て)し、後で聞き返してみましょう。「思った以上に早口だった」「『えーと』が多い」など、気づきが得られます。
ステップ2. 声のトーン・スピードを調整する練習
理想は「やや落ち着いたトーン」で「ゆっくりめ」に話すこと。スマホのボイスメモで録音練習したり、スピーチ練習アプリを使ったりするのも効果的です。
ステップ3. 信頼できる人からフィードバックをもらう
同僚やメンターに「自分の話し方、どう感じる?」と率直に聞いてみましょう。第三者の視点は貴重です。
ステップ4. 「伝わったか」を必ず確認する
話した後に「ここまでで不明点ある?」「どう理解した?」と確認する習慣をつけましょう。認識のズレを早期に防げます。
信頼されるリーダーの話し方3つの原則
原則1. 結論ファーストで簡潔に
「結論→理由→具体例」の順で話すと、部下は理解しやすく行動に移しやすくなります。
原則2. 相手が発言する余白を残す
「どう思う?」「他の意見も聞きたい」と問いかけ、対話の時間を確保しましょう。
原則3. 安心感を与える落ち着いたトーン
感情的に強く言うのではなく、冷静で安定した声で話すことが信頼につながります。
まとめ:話し方は磨ける「リーダースキル」
リーダーの話し方は、チームの信頼と成果に直結します。
避けるべきNG話し方:
- 曖昧な表現
- 否定から入る言葉
- 早口・小声
- 不適切な冗談
- 一方的な話し方
今日からできる改善策:
- 自分の話し方を録音してチェック
- 結論から話す練習
- 部下の発言時間を意識的に作る
話し方は後天的に磨けるスキルです。一つずつ実践すれば、必ず部下の反応が変わります。
【今日から始める】アクションプラン
まずは次の3つから始めてみましょう:
✅ 次の会議で自分の話し方を録音する
✅ 指示を出すとき「いつまでに」「どのレベルで」を明確にする
✅ 部下の発言に「いや」「でも」を使わず、まず受け止める
話し方を変えれば、部下のやる気が変わります。そして、あなた自身のリーダーとしての信頼も確実に高まります。
まずは「自分の話し方を客観視する」ことから始めましょう。それが、信頼されるリーダーへの第一歩です。


